「ITインフラとは?」
その答えは「情報システムの基盤部分」です。
リモートワークが急激に増加した昨今、社内のITインフラを整備することが急務となった企業も多いでしょう。
ITインフラを安全に準備しないと、情報漏洩などの大事故につながります。
また、ITインフラが快適に利用できないと、業務が円滑に進みません。
このように、ITインフラは非常に重要な役割を持っています。
そこで今回の記事では、下記のことをお伝えします。
- ITインフラとは
- ITインフラの構築・運用のポイント
- ITインフラエンジニアの種類とおすすめの資格
この記事を読むと、ITインフラの重要性を知ることができます。
ITインフラについて知りたい方、ITインフラエンジニアに興味がある方は、ぜひ最後までご覧ください。
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ITインフラとは
ITインフラは「ITインフラストラクチャー」の略で、情報システムを支える基盤のことです。
直訳すると、下記のようになります。
情報システムから見た場合、ITインフラは基盤部分です。
アプリケーションを車、ITインフラを道路としてたとえることがありますが、ITインフラが整備されていなければアプリケーションが使えないことがよくわかりますね。
このように、ITインフラはそれ単体では意味を成しませんが、アプリケーションと合わせることで大きな役割を持ちます。
ITインフラと生活インフラの違い
インフラと聞くと「電気」「水道」「ガス」などが思い浮かびますが、これらは「生活インフラ」に位置づけられるものです。
生活インフラは社会で共有される生活の基盤のことで、ライフライン(命綱)とも呼ばれています。
一方でITインフラは、情報技術の基盤となり、断たれると非常に不便で困りますが、命に係わるようなものではありません。
ITインフラの構成
ITインフラは、ハードウェアとソフトウェアで構成されています。
それぞれの構成要素について、順に解説していきます。
ハードウェア
ハードウェアは、システムを構成する機器です。
ITインフラを構成する代表的なハードウェアは下記になります。
- パソコン
- サーバー
- ストレージ
- ネットワーク
- テープ
パソコンは「パーソナルコンピュータ」の略で、個人で使用するコンピュータになります。
サーバーは、一般的に24時間常に稼働し、サービスを提供するコンピュータです。
サーバーに接続するパソコンは「クライアント」と呼ばれています。
また、ストレージは、データを格納するHDDやSSDなどの装置です。
ネットワークは、インターネットなどの回線だけでなく、ルーター・ロードバランサーなどのネットワーク機器も含めたものを指します。
テープは、大容量のデータを格納するための機器です。
ソフトウェア
ソフトウェアは、コンピュータを動作させるためのプログラムです。
ITインフラを構成する代表的なソフトウェアは下記になります。
- OS(オペレーティング・システム)
- ミドルウェア
OSは、パソコンやサーバーを動かすためのソフトウェアです。
パソコン向けの代表的なOSはWindows11やmacOSになります。
サーバー向けの代表的なOSはWindows ServerやLinuxなどです。
一方、ミドルウェアは、OSとアプリケーションの間に位置し、2つをつなぐ役割をしています。
目に見えて物理的に触ることができるハードウェアとは対照的に、目に見えなくてプログラムで動くものがソフトウェアです。
ITインフラを構築・運用するときのポイント
ITインフラを整備すれば、データが一元管理できたり、業務を効率化できたりと、企業にとって非常にメリットが大きいです。
そのため、社内のITインフラを整備して、生産性を上げたいと考える会社が多くあります。
ITインフラを構築・運用する場合には、以下のポイントに注意してください。
- セキュリティ対策
- 負荷分散
- 障害発生時のマニュアル
- ネットワーク管理
それでは、それぞれのポイントについて順に解説していきます。
セキュリティ対策
ITインフラを構築するにあたり、セキュリティ対策は不可欠になります。
なぜなら、サーバーやネットワークを整えたところで、機密情報が世の中に垂れ流しになっていては、たとえ業務効率が上がったとしてもデメリットのほうが大きいからです。
ITインフラを構築する企業は、情報漏洩や不正アクセスなどのリスクを防ぐために、様々な対策をします。
たとえば、下記のようなものが考えられるでしょう。
- リモートワークのために社外から社内のシステムを使う場合は、会社から許可を取ったパソコンしかアクセスできないようにする
- データの持ち出しができないように、USBへの書き込みは特定のパソコンしかできないようにする
- 不正ログインを防ぐために、多要素での認証システムを採用する
このような、セキュリティ対策をほどこす必要があります。
サイバー攻撃などの被害に遭うと、原因究明や復旧対応に多くの時間が必要です。
また、社会的信用を失うこともあるでしょう。
このようなことが発生しないためにも、情報セキュリティ対策を強化して安全な環境を提供することは、ITインフラ構築の最大のポイントなのです。
負荷分散
ITインフラを運用する場合は、負荷分散にも注目しましょう。
なぜなら、1つのサーバーに大人数でこぞってアクセスしてしまうと、そのサーバーへの負荷が大きくなってしまうからです。
動作が遅くなったり、サーバーがダウンしたりすることもあるでしょう。
コスト面での課題もありますが、サーバーは1台ではなく複数台用意して、1台ごとのサーバーにかかる負荷を分散させることがおすすめです。
また、サーバー1台で運用をしていると、そのサーバーが故障してしまったときに、業務システムが利用できなくなってしまいます。
そのため、遅れがなく快適なシステム環境のためには、負荷分散が大切です。
障害発生時のマニュアル
ITインフラを運用していれば、障害が発生することは避けられないため、復旧のためのマニュアルを用意しておきましょう。
マニュアルがないと、誰もやりかたがわからない、試行錯誤して時間がかかりすぎるなどといったことが起きてしまいます。
そうなれば、業務システムが停止している時間は、どんどん延びてしまうでしょう。
被害を最小限に抑えるためには、障害発生時の復旧手順をマニュアル化することが大切です。
ネットワーク管理
ネットワークの管理や監視も、ITインフラを運用するうえで大切な業務です。
たとえば、業務に使用しているサーバーが突然故障してしまえば、業務に支障が出てしまいます。
そうならないためにも、定期的にサーバー負荷を監視したり、アクセス履歴を分析したりして、何かしらのトラブルが起きる予兆がないかを調べましょう。
日々の業務を快適におこなうために、ネットワークの管理・監視は重要です。
ITインフラエンジニアの種類
ITインフラは、情報システムにおいて非常に重要な役割をしていることがわかりました。
エンジニアといえば、プログラミングをしてアプリケーションを作る人を想像しがちですが、情報システムを開発するためにはITインフラエンジニアも必須です。
ITインフラエンジニアは、システムを利用するユーザーからは見えない部分の設計・構築・運用・保守を担当します。
ITインフラエンジニアの種類は、下記のとおりです。
- サーバーエンジニア
- ネットワークエンジニア
- データベースエンジニア
- セキュリティエンジニア
- クラウドエンジニア
- インフラ運用エンジニア
それでは、順に解説していきます。
サーバーエンジニア
サーバーエンジニアの仕事は、サーバーの設計・構築・運用・保守です。
サーバーの設計では、最初に基本設計をします。
基本設計でおこなうのは、システムの用途に合わせて、使用するサーバーの性能や台数の決定など、ハードウェアに関する部分です。
次に、決定したサーバーにどのようなソフトウェア(OSやミドルウェア)を入れるかを考えたり、システムに最適なパラメータを決定したりする、詳細設計をおこないます。
サーバー構築は、設計書に基づいてハードウェアにソフトウェアをインストールすることです。
構築後にはテストを実施し、システムとして問題はないか確認します。
動作確認をしてパラメータの課題が見つかれば、構築のフェーズで微調整することも必要です。
サーバー運用・保守は、システムの稼働後におこなう仕事になります。
現場でサーバーの稼働状態を監視したり、トラブル対応をしたりします。
なお、サーバーエンジニアから周辺知識を身につけて「ネットワークエンジニア」や「セキュリティエンジニア」になることもできるので、ITインフラエンジニアの入口としておすすめです。
ネットワークエンジニア
ネットワークエンジニアは、ネットワークの設計・構築・運用・保守をします。
サーバー同士やサーバーとクライアントなど、様々なハードウェアが互いに通信できるようにする仕事です。
ネットワーク設計では、ルーターやロードバランサーなどのネットワーク機器の選定や、IPアドレスやルーティングを決めます。
ネットワーク構築では、設計書に基づいてネットワーク機器の配置やケーブルの配線をしますが、大規模システムや工事が必要となる場合は、工事業者に構築を依頼することもあるでしょう。
構築後には、動作確認や微調整もおこないます。
ネットワーク運用・保守は、ネットワークの維持管理をする仕事です。
日々ネットワークが安全に運用されているか監視することでトラブルを未然に防ぎ、もしトラブルが発生した場合は原因を究明して復旧させます。
なお、ネットワークエンジニアからクラウドの知識を身につけて「クラウドエンジニア」になったり、ネットワークの知識をさらに深堀して「ネットワークスペシャリスト」になることも可能です。
データベースエンジニア
データベースエンジニアの仕事は、データベースの設計・構築・管理・運用です。
データベース設計では、使用するデータベース製品(Oracle、SQLServer、PostgreSQLなど)を決めたり、容量やデータ格納の方針、バックアップ方法などを決めます。
データベース構築は、データベースサーバーにデータベースのソフトウェアをインストールし、セットアップする業務です。
データベース管理は、データベースのパフォーマンス向上のためにチューニングをして、正常に動くように管理します。
データベース運用では、SQLを実行してデータのバックアップをしたり、データベースの処理速度を監視したりする作業です。
なお、データベースエンジニアの先のキャリアには「データサイエンティスト」と呼ばれる、膨大なデータを分析して傾向を見つけたり予測をしたりする仕事があります。
セキュリティエンジニア
セキュリティエンジニアは、情報セキュリティ対策の設計・実装・テスト・保守・運用が仕事です。
設計業務では、どのようなセキュリティ対策をするのかを考えるだけでなく、セキュリティを強くするためのシステム設計をすることもあります。
セキュリティエンジニアの実装業務とは、システムの実装をすることです。
セキュアプログラミングとして、最適な実装をします。
そして、システムの脆弱性を見つけるためにテストをすることも大切な仕事です。
プログラムの動作テストとは少し異なり、セキュリティ検査という観点でおこないます。
ここで念入りにテストをして、セキュリティに強いシステムを作りあげることが任務です。
保守・運用では、サイバー攻撃などを受けないようにシステムを守り、安定して稼働できるように努めます。
なお、セキュリティエンジニアの先のキャリアには「セキュリティアナリスト」「セキュリティコンサルタント」「ホワイトハッカー」などがあるので、経験を積んで目指してみるのも良いでしょう。
クラウドエンジニア
クラウドエンジニアは、クラウド上のサーバーやネットワークの設計・構築・保守・運用が仕事です。
具体的には、システムの「クラウド化」に携わります。
ITインフラ全体、とくにサーバー・ネットワーク・セキュリティについて深い知見が必要です。
設計業務では、システムに利用するクラウド環境の種類を決めたり、既存システムであればクラウド化するための移行手順を考えたりします。
構築業務は、仮想サーバーの構築やクラウドのストレージなどの各種設定をする仕事です。
保守・運用では設定値のチューニングやクラウド上にあるソフトウェアやアプリケーションの管理をします。
クラウドエンジニアになるなら、AWSやAzureなどといった各種クラウドサービスの知識は必須です。
昨今の情報システムは、オンプレミス型からクラウド型へ移行しており、クラウドエンジニアの需要は非常に高くなっています。
シェア率の高いクラウド「AWS」に関する仕事について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
インフラ運用エンジニア
インフラ運用エンジニアの仕事は、稼働中の情報システムにおいてITインフラの稼働状況を常時監視することです。
サーバーエンジニア、ネットワークエンジニアの保守・運用業務のみを引き受けるイメージになります。
1つの現場に、サーバー・ネットワーク・セキュリティなど各専門分野の保守・運用要員を配置するのは難しいです。
そのため、1人でITインフラ全般の保守・運用を担える人材が必要になります。
インフラ運用エンジニアは、ITインフラに関する幅広い知識やスキルを身につけることができるため、自身の興味のある分野にキャリアパスを設定することが可能です。
ITインフラエンジニアにおすすめの資格
最後に、ITインフラエンジニアにおすすめの資格をご紹介します。
- 基本情報技術者試験
- シスコ技術者認定資格(CCNA、CCNP、CCIE)
- Linux技術者認定資格(LinuC)
- オラクルマスター
- ネットワークスペシャリスト試験
- 情報処理安全確保支援士試験
- AWS認定資格
それでは、順に解説していきます。
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は、ITインフラエンジニアに関わらず、すべてのITエンジニアに必要となるITの基礎知識を問う国家資格です。
試験範囲はストラテジ系、マネジメント系、テクノロジ系となっています。
とくにテクノロジ系はIT技術全般が範囲ですが、コンピュータ構成要素、ソフトウェア、ハードウェア、データベース、ネットワーク、セキュリティなどといった、ITインフラに関係するものも多くあり、ITインフラの基礎知識を幅広く身につけられるでしょう。
すべてのITインフラエンジニアにおすすめの資格です。
シスコ技術者認定資格(CCNA、CCNP、CCIE)
シスコ技術者認定資格は、ネットワーク機器メーカー大手のCisco社が認定するネットワークに関するベンダー資格です。
CCNAから始めて、徐々にレベルを上げていくことができます。
ネットワークやセキュリティに関することを問われるため「ネットワークエンジニア」「セキュリティエンジニア」におすすめの資格です。
初級レベルのCCNAであれば、ITインフラ全般を扱う「インフラ運用エンジニア」にもおすすめできます。
Linux技術者認定資格(LinuC)
Linux技術者認定資格は、国内向けにLinux技術者であることを証明するベンダー資格です。
レベルは3段階に分かれており、レベルが上がるにつれ専門的なスキルを深く身につけることができます。
パソコンを使用するプログラマーなどには馴染みがないかもしれませんが、サーバーにはLinuxを使うことも多いです。
「サーバーエンジニア」「ネットワークエンジニア」におすすめの資格になります。
オラクルマスター
オラクルマスターは、オラクル社が認定するデータベースに関するベンダー資格です。
4つのレベルに分かれており、下から2番目の「Silver」の試験では、データベースの運用・管理やSQLに関することを問われます。
「データベースエンジニア」であれば「Silver」以上の資格がおすすめです。
ネットワークスペシャリスト試験
ネットワークスペシャリスト試験は、非常にレベルの高いネットワークに関する国家資格です。
試験内容は、ネットワーク全般について、広く・深く問われます。
顧客の要求に応えるためのネットワーク構成についてや、快適なネットワークを維持するための方法などが試験内容です。
難しい試験になりますが、ネットワークにおける高度な知識が身につくため「ネットワークエンジニア」「セキュリティエンジニア」におすすめの資格になります。
情報処理安全確保支援士試験
情報処理安全確保支援士試験は、セキュリティに関する国家資格です。
2016年以前は、情報セキュリティスペシャリスト試験と呼ばれていました。
情報セキュリティだけでなく、情報システムに関する脅威の分析についてやネットワーク、データベースについても出題されます。
「セキュリティエンジニア」だけでなく「サーバーエンジニア」「ネットワークエンジニア」「データベースエンジニア」「クラウドエンジニア」といったセキュリティ対策についての知識も必要となるエンジニアにもおすすめの資格です。
AWS認定資格
AWS認定資格は、AmazonのクラウドサービスAWSに関する知識を問うベンダー資格となります。
レベル分けされていますが、基礎レベルから順にステップアップするのがおすすめです。
近年、多くの企業がクラウド化に向かっていることもあり、「クラウドエンジニア」だけでなく「サーバーエンジニア」「ネットワークエンジニア」「データベースエンジニア」も知識として知っておくと良いでしょう。
ITインフラとは?運用のポイントやエンジニアの仕事内容もご紹介まとめ
ITインフラについて、またITインフラエンジニアについて解説してきました。
ITインフラとは、情報システムの基盤部分のことです。
情報システムは基盤だけでは動きませんが、基盤が整っていないとうまく動きません。
ITインフラは、非常に重要な役割を持っています。
それを扱う、ITインフラエンジニアも大変需要の高い仕事です。
ITインフラに興味がわいた方は、ぜひITインフラエンジニアを目指してみませんか。
キャリアパスも多く、様々な分野で活躍することができるでしょう。