「Djangoってどんなときに使うんだろう?」
「Djangoを選ぶ理由って何?」
という疑問を持っている方もいるのではないでしょうか。
Djangoは、PythonでWebサイトを作るときに利用するフレームワークです。
Webサイトに必要な機能を一通り取りそろえているので、大規模なWebサイトを作る場合に選ばれます。
しかし、Pythonのフレームワークは、Django以外の軽量でシンプルなフレームワークも人気があります。
この記事では、Djangoについて下記の内容をお伝えします。
- Djangoで開発できるもの
- 特徴
- 開発事例
- メリット・デメリット
- その他のPythonフレームワークについて
- 学習方法
この記事を読めば、Djangoを利用するメリットがわかり、PythonでのWeb開発エンジニアは習得の必要性を感じるでしょう。
Djangoについて気になっている方は、ぜひ最後までご覧ください。
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Djangoとは
Django(ジャンゴ)とは、2005年にリリースされた、Webアプリケーション用のフレームワークです。
Pythonで実装されています。
ちなみに、Djangoの開発者のひとりであるAdrian Holovaty(エイドリアン・ホロヴァティ)は、Web開発者でありながらジャズギタリストでもあり、有名なジャズギタリストであるDjango Reinhardt (ジャンゴ・ラインハルト)の大ファンだそうです。
Djangoで開発できるもの
Djangoで開発できるものは、下記のとおりです。
- Webアプリケーション
- WebAPI
それでは、順に解説していきます。
Webアプリケーション
Djangoを利用すれば、あらゆるWebアプリケーションを、少ないコードで簡単に作ることができます。
シンプルなものであれば、超短時間で作ることも可能です。
複雑なものも、機能を拡張して作ることができます。
WebAPI
Djangoには「Django REST framework」というWebAPI作成ツールが含まれています。
なお、API(Application Programming Interface)は、プログラムを別のプログラムで使えるようにする仕組みです。
Djangoの特徴
Djangoには下記の特徴があります。
- MTVアーキテクチャー
- フルスタック・フレームワーク
- Webサイトの定番機能が揃っている
- 拡張性が高い
それでは、それぞれの特徴について順に見ていきましょう。
MTVアーキテクチャー
Djangoは、MTV(Model Template View)アーキテクチャーという設計思想が採用されています。
MTVは、下記の3つの要素で構成されたものです。
- Model(モデル)
- Template(テンプレート)
- View(ビュー)
Modelはデータを扱い、データベースとのやりとりや、ビジネスロジック部分を記述します。
Templateは、Webページのデザインのことです。
テンプレートファイルにデザインを定義します。
Viewは表示するWebページを決めるための処理です。
役割を分けてプログラミングできるので、開発を効率的に進められるでしょう。
なお、MTVとよく似たアーキテクチャーに、MVCというものがあります。
MVCの構成要素は下記のとおりです。
- Model(モデル)
- View(ビュー)
- Controller(コントローラー)
MTVのデザインはTemlateに記述しますが、MVCのデザインはViewに記述します。
一方、MTVにもViewがありますが、MTVのViewはデザインではなく、どのページかを決める役割です。
フルスタック・フレームワーク
Djangoはフルスタック・フレームワークです。
フルスタックとは、Webサイトを作るために必要な一通りの機能を全部取りそろえていることを指します。
Webサイトの定番機能が揃っている
Webサイトには様々な機能がありますが、Djangoを使えばWebの定番機能を効率的に作ることができます。
Djangoに用意されている定番機能は下記のとおりです。
- 管理画面
- ユーザー認証
- サイト案内ページ
- RSSフィード
- 静的ファイル公開
それでは、順に解説していきます。
管理画面
Djangoには管理画面のテンプレートが含まれています。
管理画面とは、Webサイトの管理者のみがアクセス可能なページのことです。
たとえば、ダッシュボード機能やユーザー管理機能、各種設定機能、コンテンツ追加機能など、Webサイトには閲覧者が使わなくても、管理者には必要となるページがたくさんあります。
Djangoは、これらのページを簡単に作ることが可能です。
ユーザー認証
Djangoにはユーザー認証機能がついています。
ユーザー名とパスワードをもとに該当ユーザの権限チェックが可能です。
なお、Djangoのユーザー認証機能では、パスワードが暗号化されていたり、セッション情報はデータベースに保存したりと、セキュリティも考慮された仕組みになっています。
ユーザー認証を一から作る場合、セキュリティ面が気になりますが、最初からトラブルが発生しにくいように設計されているため、非常に便利です。
SNSアカウントでのログイン機能もあります。
サイト案内ページ
Webサイトに必要な、案内ページもDjangoがあれば簡単に作ることができます。
サイト案内ページとは、Webサイトについての説明のページです。
Webサイトのすべてを見なくても、どこのページにどのようなことが書かれているかを知ることができます。
ページ数の多い大規模Webサイトでは、サイト案内ページを作るのは大変です。
Djangoを使えば、ページの関連付けなどを簡単におこなうことができます。
RSSフィード
Djangoでは、RSSフィードをつけることができます。
RSSフィードとは、Webサイトの更新情報を外部に伝える機能です。
ブログなどで新着や更新記事をお知らせしたい場合に使います。
静的ファイル公開
Djangoに搭載された「django contrib statfiles」という仕組みを使えば、静的ファイルを公開することができます。
Webサイトでは、HTMLファイルの他に、画像ファイル、JavaScriptファイル、CSSファイルをサーバーから送信することが必要です。
Djangoでは、それらのファイルを1箇所に集めて簡単に公開することができます。
拡張性が高い
Djangoにある部品の数々は、独立して存在するため、簡単に拡張することができます。
拡張性の高さから、様々な機能や役割に柔軟に対応することが可能です。
Djangoを使用して作られたもの
Djangoを使用して作られたものには下記のようなものがあります。
- Mozilla
- National Geographic
- NASA Official Website
- The New York Times
このように、有名なWebサイトにもDjangoが使われています。
Djangoを使用するメリット
Djangoを使用するメリットは下記のとおりです。
- 動作が高速になる
- 開発工数が減る
- メンテナンス性が上がる
- セキュリティが高まる
それでは、メリットについて順に解説していきます。
動作が高速になる
実はDjangoは、機能が少ない軽量なフレームワークと比べると処理速度は若干遅めです。
とはいえ、大きな影響があるほど遅いわけではないので、高速処理が必要な場合でなければそこまで問題ではないでしょう。
しかし、memcachedと呼ばれる分散型のキャッシュ機能を使えば、高速処理が可能になります。
Djangoをただ使うだけではなく、高速化を実装することで、大規模サービスなどでも動作を高速にすることが可能です。
開発工数が減る
Djangoを利用すれば、開発のスピードはかなり速くなります。
Webサイトの定番機能がそろっていることは、非常に大きなメリットでしょう。
また、MTVアーキテクチャであることから、処理をすみわけすることが可能となり、メンバー間の役割分担もしやすいため、さらに開発スピードは上がります。
メンテナンス性が上がる
Djangoを利用したプログラムは、メンテナンス性が高くなります。
なぜなら、様々な機能がテンプレート化されていることから、冗長的になったり複雑になったりするプログラムがなく、他の人が見てもわかりやすいプログラムを書くことができるからです。
また、MTVアーキテクチャにより、どこに何の処理が書かれているかがはっきりしていることも、メンテナンス性を上げる1つの理由になります。
セキュリティが高まる
Djangoでは、セキュリティの高いWebサイトを作ることができます。
「Djangoを使用して作られたもの」で紹介したとおり、有名な大規模サイトに採用されるほどセキュリティに信頼があるのです。
たとえば、Webサイトではセッション情報をcookieに保存することはよくありますが、Djangoではセッションキーのみをcookieに保存して、セッションデータはサーバー上に保存します。
また、パスワードも暗号化して管理されるので安全です。
セキュリティの問題として挙げられるリスクの定番である、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングにも対応しています。
Djangoを使用するデメリット
Djangoを使用するデメリットは下記のとおりです。
- 習得は少し難しい
- 日本語の技術情報はあまり充実していない
それでは、デメリットについて順に解説していきます。
習得は少し難しい
Djangoは、多くの機能があり便利な一方、習得は若干難しいといえます。
なぜなら、他のフレームワークと比べて機能が多い分、覚えることが多くなるためです。
すべてを理解するまでには膨大な時間がかかるため、ある程度の知識を身につけたら、実践で覚えたほうが良いでしょう。
ただし、初心者ではなく実務経験があるエンジニアであれば、そこまで難しいフレームワークではありません。
日本語の技術情報はあまり充実していない
Djangoは、インターネット上に多くのノウハウがあり、すぐに情報を得ることができます。
しかし、日本語の情報はあまり充実していないのがネックです。
Django以外のPythonフレームワーク5選
Django以外のPythonフレームワークを5つご紹介します。
- Flask
- Tornado
- web2py
- Bottle
- Tensorflow
それぞれのフレームワークの特徴を順に解説していきます。
Flask
Flaskは、必要最低限の機能のみ搭載されているマイクロフレームワークです。
フレームワークとしては、Djangoよりかなり機能が少なくなります。
しかし、シンプルで軽量なので、動作の速いWebページを手軽に作成可能です。
また、必要最低限の機能にしぼられているため、学習コストは低くなります。
機能が多くない小規模なWebアプリケーションを作りたい場合には、Djangoより使い勝手が良いでしょう。
Tornado
Tornadoは、非同期通信が可能なフレームワークです。
非同期なので、送信と受信のデータの受け渡しタイミングを考えずにプログラミングできます。
知名度はあまり高くありませんが、シンプルかつ処理のスピードが速いため、使い勝手が良いフレームワークです。
しかし、実際の仕事の現場ではあまり使われることはありません。
Tornadoはあくまでも、個人向けのWebサービスへの利用というレベルです。
非同期で処理をするWebサービスを作りたい場合には、Tornadoを使ってみるのも良いでしょう。
パフォーマンスも高いため、おすすめです。
web2py
web2pyは、Djangoと同じで全部入りのフルスタック・フレームワークです。
アジャイル開発をするのに向いています。
セキュリティにも強く、Webサービスにおける脆弱性の課題(SQLインジェクション、クロスサイトスクリプトなど)を防ぐことが可能です。
ただし、Djangoと比較すると、web2pyを利用している企業の求人はほぼありません。
Bottle
Bottleは、1ファイルだけで手軽に使えるフレームワークです。
初めてWebフレームワークを扱う人が、入門として使うのに適しています。
比較的新しい技術であるため、利用者はそれほど多くはありませんが、個人のWebサービスや学習用として使われているフレームワークです。
bottle.pyという1ファイルだけで構成されているため、非常にシンプルで覚えることが少ないので初心者に向いています。
ただし、フレームワークでできることはそう多くはありません。
データベースを扱うようなシステムへの導入には、あまり向いていないといえるでしょう。
Bottleは、アクセス数が多いサイトや、機能が少なく軽量なサイトを作りたいときに便利です。
Tensorflow
Tensorflowは、Googleが開発したフレームワークです。
このフレームワークは、Pythonが得意な機械学習に向いており、2015年のリリース後から爆発的に世界シェアが高くなっています。
Tensorflowは、Python以外のプログラミング言語にも使うことができるため、機械学習やAIの分野に携わるエンジニアは覚えておいて損はないフレームワークです。
顔認証や音声認証などの分野は今後も需要が大きいため、Tensorflowの将来性も高いといえるでしょう。
また、人工知能に強いGoogleが開発しているため、安定性も高く、ますます人気が高くなることが予想されます。
Djangoの学習方法
Djangoの学習方法は下記のとおりです。
- Djangoを学ぶ前にPythonの基本を押さえる
- 書籍で学習する
- Webサイトで学習する
- セミナーやスクールで学習する
それでは、それぞれの学習方法について順に解説していきます。
Djangoを学ぶ前にPythonの基本を押さえる
DjangoはPythonで使うためのフレームワークです。
そのため、Djangoを学ぶ前にPythonの基本を押さえておく必要があります。
PythonはWebアプリケーションや機械学習のためのプログラミング言語ですが、ここではWebアプリケーションのほうだけ理解できれば十分です。
Pythonの学習におすすめの書籍をご紹介します。
- Python1年生 体験してわかる!会話でまなべる!プログラミングのしくみ(著者:森巧尚、出版社:翔泳社)
- Pythonスタートブック 増補改訂版(著者;辻真吾、出版社: 技術評論社)
- 独学プログラマー Python言語の基本から仕事のやり方まで(著者:コーリー・アルソフ、出版社:日経BP社)
「Python1年生」や「Pythonスタートブック」はプログラミング初心者におすすめの、超初級の書籍です。
「独学プログラマー」は、初心者から中級者まで長く使え、基礎をしっかり押さえることができます。
書籍で学習する
Pythonの知識がある程度身についたら、Djangoフレームワークの学習に移りましょう。
Djangoの学習におすすめの書籍は下記のとおりです。
- Python Django 超入門(著者:掌田津耶乃、出版社:秀和システム)
- Djangoビギナーズブック(著者:滝澤成人、出版社:カットシステム)
- 動かして学ぶ! Python Django開発入門(著者:大高隆、出版社:翔泳社)
- Djangoのツボとコツがゼッタイにわかる本(著者:大橋亮太、出版社:秀和システム)
「Python Django 超入門」については、事前にPythonの学習をしていなくても、手順どおりにプログラミングすることでDjangoを学ぶことができます。
完成したプログラムをもとに、あとからPythonを学ぶことも可能です。
「Djangoビギナーズブック」では、基礎を習得することができます。
Pythonの基礎的な知識があり、次にフレームワークを学びたいという人向けの書籍です。
Webサイトで学習する
Djangoを習得するために、Webサイトを使ってみるのも良いでしょう。
Webサイトでの学習は、動画を見ながら学べたり、実際にプログラムを記述することができたりと、書籍とは違ったメリットがあります。
Djangoの学習におすすめのWebサイトは下記のとおりです。
時間をかけずに動画で概要をつかみたい場合には「Paizaラーニング」がおすすめです。
チュートリアルを使って、実際に手を動かしながら学びたいなら「Django Girls Tutorial」「DjangoBrothers」を利用してみましょう。
「Django公式チュートリアル」は、初心者では理解が難しいところがあるかもしれません。
ある程度概要をつかんでから利用すると良いでしょう。
セミナーやスクールで学習する
確実にスキルを身につけたい場合は、セミナーやスクールに通うのも良いでしょう。
Pythonを習得できるスクールを選べば、Djangoもあわせて習得できることが多いです。
まったくの未経験者であったり、独学では挫折する心配がある場合は、スクールを利用して強制的に学習すると良いでしょう。
書籍や動画より費用はかかりますが、体系的に学ぶことができ、講師に質問もできるのでおすすめです。
Djangoって何?特徴・開発事例・メリット・デメリット・学習方法を解説まとめ
この記事では、Djangoについてお伝えしてきました。
Djangoはプログラミング言語ではなく、PythonでWeb開発をするためのフレームワークです。
必要そうな機能を全部搭載した、フルスタック・フレームワークなので、Djangoを利用すれば複雑なWebサイトでも多くの処理を書かずに作ることができます。
ただし、機能が多い分、覚えることも多いので学習コストは低いとは言えません。
Pythonで大規模なWebサイトを作成するエンジニアの方は、覚えておいて損はないフレームワークなので、この機会にぜひ習得してみてはいかがでしょうか。